タニト神
Tanit
現在、カルタゴに残っている遺跡のほとんどが、カルタゴ滅亡後、ローマ帝国が街を再建したときの物で、カルタゴオリジナルの物はほとんど残されていない。
そのカルタゴ時代のものとして、僅かに残っているのがトフェの墓石群であるが、そのなかでも明らかにカルタゴ時代のものと言える証拠がこのタニト神である。
正確に言うと、フェニキア人達は、バール・ハモン(Baal Hammon)というフェニキアの古代宗教神と、このタニト神を信仰していた。タニト神とはカルタゴの守護神であり、カルタゴ時代の遺跡には必ず出てくるものである。
ここでは、トフェで見られるタニト神のごく一部を紹介する。
頭部が丸、そして直線の手が横に出ていて、下半身は二等辺三角形になっているのが分かるだろうか。これがタニト神である。
なぜこんな形をしているのか・・・。実はカルタゴには幼児を殺して神に捧げるという習慣があった。その証拠に、トフェからは炭化した幼児の遺骨が多数発見されたという。「祭司は儀式の際、子ども達の首を切り、燃えさかる補脳の中に入れた・・・」という記録がローマ側に残っている。その残酷性がローマに嫌われた一因という説もある。
タニト神はそんな幼児の霊を神格化させたものではないか・・・とボクは考えている。